現代文
受験において、一番点数が安定しにくい科目が国語と言われています。確かに国語は試験により毎回異なる文章で、安定して点数を採ることが難しいように見えます。しかし、国語の基礎力を徹底して付けていくことで安定して点数を採ることが可能であり、難易度の高い問題にも応用がききます。国語は「評論文」「小説」「古文」「漢文」4つの分野に分かれており、それぞれの基礎力を伸ばしていくことが大切です。では、一体どのような勉強をしていけば国語の成績(偏差値)を上げることができるのか、今回は「国語の勉強法」ということでそれぞれの分野ごとに説明いたします。
評論文
国語の勉強で一番のメインとなるのが評論文です。私立大学を受ける人や理系の人は、「古文」、「漢文」、場合によっては「小説」を勉強する必要がないということもあります。しかし、評論文はどの受験生でも必ず勉強しなければなりません。評論文の入試問題は、大学生や大人を対象とした新書などの本の一部から出題されていますので、当然、その内容は難しいものが多いです。それだけではありません。少ない制限時間しかないのにかかわらず、3000文字から4000文字とかなりの分量を読む力が求められるのです。だからこそ、現代文の勉強のカギは、はじめに述べたように、「基礎力」をどれだけ身につけられるかどうかにかかってきています。では、基礎力とはどういう力なのでしょうか。また、どうすれば基礎力を身につけることが出来るのでしょうか。詳しく説明いたします。
評論文の基礎力とは?
評論文の基礎力とは、「読解力」のことです。初見の文章に対して、「どれだけ正確に筆者の主張をつかむことができるかどうか」ということがポイントになってきます。受験生の中には、何も勉強していないのに、国語だけは比較的高い偏差値を取れるという生徒が稀にいます。これらの生徒に共通することは、小学生や中学生のときに、かなり多くの分量の本を読んできているということです。もちろん、国語が出来るすべての生徒が、過去に多くの本を読んでいるということではありませんが、小さい頃から、本を読んでいる生徒で、国語が得意な生徒は多いです。では、なぜこのようなことが起こるのでしょうか。その理由は、評論文を出題する意義に、密接に関わってきているのです。
評論文を出題する意義
大学は、〇〇学部〇〇学科という風に、専門の分野に分かれて勉学をします。専門の分野の知識を得るためには、当然難しい文献を読むという力が必要になってきます。だからこそ、大学入試では、大人向けの難しい評論文という問題を出題することによって、大学に入る前に、そのような文献を読む力をつけさせようというのが大学側の狙いです。そうなると当然、数多くの本を読んだ人の方が読むスピードが速く、文章の内容を理解するのも速い可能性が高いです。そのような理由で、小さい頃から本を多く読んできた人は、国語の入試問題で、比較的点数が高い生徒が多いのです。だからといって、受験生になってから本を多く読むのでは、試験に間に合わないでしょう。では、どのようにすれば多く本を読んでいなくても短期間で「読解力」を身につけることが出来るのでしょうか。
評論文を制するための「読解力」を身につける方法
では、具体的に「読解力」を身につける方法を説明いたします。その方法は、「筆者の一番伝えたいこと」を探しながら、文章を読むことです。大学入試で、評論文を出題する目的は、専門文献を読む力をつけさせるため、ということならば、そのような勉強をすればよいのです。国語の入試問題も同じで、文章を読むときに大切なことは「筆者の意図」を明確にすることです。初めは、どの文が大切なのか、筆者が何を言いたいのか、あまりピンとこないこともあると思います。しかし、「何が伝えたいのか」ということを念頭に置いて、文章を読んでいくことによって、必ず、「文章の強弱」が見えてきます。例えば、「逆説の接続詞が使われているから、ここは筆者が強く言いたいことだ」、「この文は具体例が来ているから、補足説明になっているな」、「繰り返されているからこそ、ここが主張だ!」という風に、文章の中でも、その弱さや、強さが見えてくれば、力がついてきたということです。いきなりそのような力を身につけろと言われても、難しいと思いますので、そのサポートをしてくれる参考書を後述します。
読解力は、あくまで基礎作り
評論文を読むための「読解力」が身に付いたからといって、それで評論文のすべての問題が解けるというわけではありません。読解力は、あくまで基礎です。家を建てるときに、基盤がしっかりとしていれば、その後にどんなに重い木材で家を作ったとしても、その家が崩れることはありません。それと同じように、強靭な基礎を築いてあげることが大切です。では、読解力が身に付いた後には、どのようなことをすればよいのでしょうか。
「読解力」の後は、「問題解答力」
初めて見る文章を読んだときに、なんとなくでも筆者の主張がわかるようになったのならば、次のステップに進みましょう。次は、問題解答力を身につけましょう。読解力が基礎とするならば、問題解答力は応用です。先ほど、家の説明をしましたが、土台のないところに家を建てることは出来ません。同じように、読解力という基礎なくして、応用である問題解答力を身につけることは出来ないので、読解力がまだ怪しいという人は、基礎を固めてから次に進むようにしましょう。
問題解答力とは、問題を解くための力
問題解答力というのは、問題を解くための力のことです。国語の試験では、出題された文章に対して問題が必ず出題されます。例えば、「下線部1の、概念という言葉について、当てはまるもの1~4の中から一つ選べ」というような問題です。文章を読み、筆者の主張を理解するだけでは、すべての問題を解くことは出来ません。肝心なのは、問題を解くことなのです。問題に正解することで、初めて点数を得ることが出来ます。問題解答力を身につけるためには、「消去法で解くこと」が大切です。評論文には記述で書かなければならない問題を出題する大学もありますが、センター試験ではすべての問題が4択の選択問題になります。また、私立大学の入試問題では、選択式の割合が高い大学が多いです。国公立を受ける人や難関私大では、記述問題も出ますが、ひとまずは4択の問題が解けるようになってから、記述に取り掛かると良いでしょう。そのような理由から、問題解答力を身につけることとは、言い換えると、消去法で問題を解くことなのです。具体的には、文章と選択肢を照らし合わせて、絶対に違う部分を探していきましょう。例えば、選択肢で、「地球環境を守ることこそが、我々に課された絶対的な正義なのだ」という選択肢の場合は、文章と照らし合わせて、「絶対的」という言葉が不適切だから、バツにするという風に、不適切な部分を照らし合わせてみましょう。また、なぜその選択肢が間違っているのか、明確な理由を答えられるようにするというのも消去法のポイントです。
評論文では「背景知識」と「頻出語句」も大切
あまり聞いたことがないという人もいるかもしれませんが、背景知識も評論文では大切な要素になります。評論文は数限りない本の中から出題されるので、どのような問題が出るかわからないと思うかもしれませんが、実は頻出のテーマが決まっているのです。例えば、「言語論」、「日本と外国」、「近代と現代」というように頻出のテーマをあらかじめ理解しておくと、文章がスムーズに頭に入りやすくなります。また、「頻出語句」を抑えておくのも大切です。頻出語句とは、日常であまり聞いたことがない評論文でよく使われる言葉です。例えば「概念」、「イデア」、「混沌」、「抽象」などの言葉があります。このような語句は、単体で意味を聞かれることもあるので、必ず押さえておきましょう。「背景知識」と「頻出語句」がまとまっている参考書がありますので、後述します。
小説
大学入試で小説が出題されることは少ないですが、注意するべきなのはセンター試験です。国公立大学を狙う受験生は、センター試験である程度の点数を取ることが出来なければ、2次試験に出願することすらできません。また、私立大学を目指している人もセンター利用という制度があり、センター試験で高得点を取ると、それだけで志願する大学に受かる可能性もあります。センター試験で、国語の配点は、評論文、小説、古文、漢文、それぞれ50点満点になります。小説の代わりに評論文や随筆が出題された年もありますが、ここ数年は小説の出題が続いているためしっかり対策していきましょう。ここではセンター試験対策としての小説について説明いたします。
感情は表現に要チェック
主要人物の感情表現が出てきたら要注意です。センター試験の問題で、なぜそのような感情になったのか理由を答える問題が過去多く出題されています。センター試験の小説は、そこまで難しい問題が出題されることはありませんが、時間制限が非常に厳しいです。感情が出てきた時点で、なぜそのような感情になったのか事前にチェックすることで、わざわざ文章を読み直しすることのないようにしましょう。また、明らかな感情表現でなくとも、行動で感情を表すような場合もありますので、そのような場合も理由と根拠を明確にして読み進めていきましょう。
小説は客観的に読むこと
小説を読む際には、必ず「客観的に」読むようにしましょう。受験生がしてしまうミスとして、勝手に答えを想像するということがあります。例えば、AさんとBさんがいるとします。このAさんがBさんの物を盗んでしまいました。では、AさんとBさんどちらが悪いでしょうか?常識的に考えれば、物を盗んだAさんが悪いです。しかし、答えの根拠となるのは「常識」ではありません。答えは必ず「文章中」から探し出さなければなりません。先ほどの例では、その後の文章で、AさんかBさんどちらが悪いか理由が述べられるかもしれません。そのように、「明確な根拠」を「文章中」から探していくような読み方を、客観的な読み方と言います。決して、自分で勝手に判断して、選択肢を選ぶということはしてはいけません。
おすすめの参考書(現代文)
レベル1 基礎固め〜日東駒専・産近甲龍
インプット型(参考書)
現代文と格闘する
インプット
この参考書はインプット用の参考書で、「読解力」を高めるのにとてもおすすめの参考書です。どのようにすれば筆者の主張を理解することができるかのポイントも載っています。なにより、とても丁寧に「読む」ということについて説明してくれます。読解力だけでなく、問題の解き方も載っているので、「問題解答力」を高めることも出来ます。ただし、分量がものすごく多いことと、問題のレベルが割と高いので、時間がある人におすすめの参考書になります。
現代文読解力の開発講座
インプット
現代文と格闘するに取り組むには、時間がないという人にはこちらの参考書がおすすめです。現代文と格闘するよりも、分量を少なくして、レベルを下げたのが現代文読解力の開発講座の特徴です。指示語や接続詞などのディスコースマーカーと言われる、文章の強弱を読むときのポイントもわかりやすく説明しているために、なんとなく問題を解くということがなくなります。なぜこのような答えになったのか、ということが明確に分かるようになります。
現代文キーワード読解
インプット
先ほど説明した「背景知識」と「頻出語句」をまとめているのが、この参考書です。語句だけを説明するのではなく、文章の中で重要な語句と背景知識を覚えることが出来るので、無理に暗記する必要はありません。繰り返し、読むことで自然と覚えることが出来ます。レベルとしても、基本はすべて抑えられていますので、「背景知識」と「頻出語句」を覚える、はじめの一冊としておすすめです。
出口の現代文レベル別問題集1~3
アウトプット
東進ブックスから出版されている、現代文の王道とも呼ぶべき問題集の一つです。
比較的文字が大きく、文章を読むことが苦手な人でも取っ付きやすい内容となっています。
レベル的には1が超基礎、2が基礎なので、まずは1と2を完成させた後、余力があれば3に進んでみましょう。現代文の『解き方』がゼロから自然に身につくような設計になっているので、現代文に苦手意識がある方は是非、最初からやりきってみてください。
マーク式基礎問題集現代文
アウトプット
タイトル通り、マーク式(選択式)の基礎問題集です。
分量はセンター試験より少し短めで、内容も比較的平易なものが多いです。
ある程度の長さの文章を読む体力を付ける必要があるので、最初は思うように得点できなかったとしても、まずは全ての問題を解いてみてください。
その後、余力がある人は正解できた問題もできなかった問題も、正しい選択肢だけを手書きで書き写してみてください。その際、ただの単純作業として書き写すのではなく、『記述問題であればこれを自分の手で書かなければならないんだ』という意識をもって取り組むことが必要です。
例え志望校合格のために記述問題が必要なかったとしても、国語力が飛躍的に向上します。
船口のゼロから読み解く最強の現代文
インプット アウトプット
テーマごとに問題が分かれており、解説と問題が一緒になったような形式です。
これ一冊で、『現代文を解くために必要な頭の使い方』『考え方の手順』『作者の意図の読み取り方』など、基本事項が自然に身に付くようになっています。
一冊が終わるころには基礎固めがあらかた終わっている設定なので、現代文初心者には最適な参考書と言えます。
レベル2 GMARCH・関関同立 地方国公立レベル
船口のゼロから読み解く最強の現代文
インプット
これを現代文の参考書として掲載するかは非常に迷いました。実際に賛否両論ある参考書ですし、正統派な先生であれば真っ先に否定するかもしれません。
また、『1冊で基礎固めができる』という種のものではなく、『実力がなくても、問題作成者の裏をかいて正答を導き出す裏ワザ』教本です。
しかしながら、これらの方法をマスターしたからと言って現代文の基礎力が下がるわけではなく、最後の最後に2択で迷った時、大きな助けになるのも事実です。この解法だけを使って本番に臨むのは危険ですが、武器の一つとして持っておくのはおすすめです。現実として、現代文の成績を飛躍的に上げるのは難しいこと、現代文の学習にそれほど多くの時間を割けないことなどを考えると、全てでなくても良いので、これらの裏ワザも使えるようにしておくと便利です。これはセンター試験用の問題ですが、私大入試にも十分活用できるので、一度目を通してみる価値はあります。
私大編現代文のトレーニング
アウトプット
レベル順に問題が並べられており、その全てはZ会のオリジナル問題です。
問題のレベルは比較的高めですが、その分解説は非常に詳しいので、正解率を上げることだけにこだわらず、解説の文章も丁寧に読んでみてください。志望校のレベルに合わせ、必ずしも一冊すべてをやりきるのではなく半分目まで解き進める等、柔軟に対応してみるのもおすすめです。
マーク式総合問題集 国語
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とにかく問題演習をしたい方におすすめです。こういう言い方はよくないかもしれませんが、あまり信頼できない問題集だと、選択肢の作り方が雑なケースが非常に多くみられます。(学校用教材でも、適切でない選択肢が羅列されているような問題集はあるので注意が必要です)
その点、河合塾のマーク式問題集であれば、問題レベル、選択肢、解説ともに非常に信頼できますし、問題演習には最適の問題集です。
センター試験国語過去問
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小説に関しては、センター試験の過去問が一番おすすめです。テクニックをまとめた参考書も数多く出版されているのですが、参考書によって、解き方は全く違うので、どのやり方で勉強すればよいのかわからなくなってしまうという受験生が後を絶ちません。センターの小説は、「客観的に読むこと」、「登場人物を抑えること」、そして「感情表現を注意して読むこと」に注意して、後は答え合わせをする際に、なぜ間違えたのかをしっかりと考えて、修正していくだけで、8割以上とれるようになります。また、参考書で勉強するほど、小説に時間をかけられないという受験生も多いはずです。そのような時間があるなら、英語や数学、もしくは苦手科目の勉強時間に当てたほうが良いでしょう。小説は、なぜそのような答えになったのか、見直しをすることが大切です。答え合わせをしたから終わりではなく、なぜその選択肢が答えになったのか、良く見直、次に生かせるようにしましょう。
出口の現代文レベル別問題集5
インプット アウトプット
先ほどの基礎固め編でもご紹介しましたが、解説を読みながら少しずつ問題を解き進めていくには非常におすすめな参考書の一つです。解説も非常に洗練されており、問題のレベルも中堅~難関私大(関関同立程度)向けとなっています。一気に最後まで解いてしまうのではなく、一つ一つ丁寧に解き進めることが大切です。そうすることで、『正答する感覚』が身に付いていくはずです。
レベル3 早慶・旧帝大レベル
教養としての大学受験国語
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「読解力」、「問題解答力」、「背景知識」、「頻出語句」という評論文に大切なすべての要素がぎゅっと詰まっている参考書です。特に「読解力」を付けるという面で、この参考書よりも優れた参考書はないように思えます。ただし、新書だからといって油断して読んでいると、問題の分量がとても多いので、痛い目にあいます。すべての受験生向けの参考書というには、難易度が高く、量も多いです。難関大学を受験する文系の受験生に強くお勧めします。
入試現代文へのアクセス
アウトプット
基礎編が取り掛かりやすく有名な参考書ですが、実は発展編のレベルがちょうどいいです。GMARCHを受ける人は出来て当たり前という問題から早慶上智を受ける人にとっては、少し難しい問題まで網羅されています。記述問題は少な目になっているので、国公立を受ける人にはあまりお勧めできませんが、レベルもちょうどよく、良問が多く入っているので、難関私立受験を考えている人に特におすすめの参考書です。
上級現代文Ⅰ
アウトプット
非常に難しい問題が収録されています。
難関私大だけでなく、難関国公立にも対応できるレベルです。この1冊すべてをやりきるのは時間的に厳しいと思うので、半分程度まででも構いません。
記述のレベルも相当高いので、問題を解き進めることよりも『何故そのような解答になるのか』という分析を重視してみてください。1題あたりに時間をしっかりとかけ、難しい問題への対応力を身に着けてください。
志望校過去問や模試問題
早慶や旧帝レベルになると、市販の問題集を買って解くよりも、河合塾や駿台などが主催している大学別模試を受験し、その解き直しを徹底したり、ひたすら過去問演習を繰り返すことが大切です。
これほどの難関レベルになると、いわゆる赤本などの正答例を見ても『どうしてこんな回答になるのかさっぱり分からない』というケースも多いです。しかしながら、そのほとんどが『本文に書いてある内容を自分の言葉で言い換えている(リライトしている)』に過ぎません。だからこそ、正答例を分析し、『自分でも書ける正答』を作り直してみる作業も必要不可欠と言えます。